【環境・社会】 2008年12月20日
展示会は環境コミュニケーションの場
展示会は環境コミュニケーションの場
~ 出展者の環境と展示会のあり方を考える ~
2008年7月に開催された北海道洞爺湖サミットは、地球温暖化、資源枯渇等の課題を始め、将来の地球や人類にとって重要なサミットとなりました。また、京都議定書の第一約束期間が始まり、国内においても温室効果ガス削減の取り組みは急務となっています。このような社会背景を考慮して、展示会の出展者である企業も、環境と展示会のあり方を真剣に考える時が来ていると思います。
展示会に出展することは様々な場面でCO2を排出、廃棄物を出します。これだけを考えると決して環境に配慮した行為ではありません。しかし、展示会はエコ製品やサービスを社会に紹介して、持続可能な社会創りのための環境コミュニケーションの場となり、低炭素化社会推進のためのツールになり得ると考えます。それには、来場者・主催者・施工者・出展者がそれぞれの立場で環境と展示会のあり方を考えて協働することが大切です。
企業が展示会に出展する主な目的は、製品やサービスを紹介して新たな取引先の開拓や新製品等の販売をすることですが、それには、来場者のニーズに応える出展をする必要があり、その意味でも環境は展示会のキーワードとなっていると思います。十数年前には環境配慮は企業経営の負担と考えられ、数年前には環境配慮は企業のPRメリットとなりました。そして現在は、環境配慮ができない企業は社会や消費者のニーズから取り残されてしまう傾向にあります。それは来場者の企業も、出展者の企業も、施工者の企業も同じで、展示会においてもビジネスチャンスから離れていく企業となってしまうのかも知れません。
来場者の環境に対するニーズや立場、意識と知識はここ数年で変化して、環境配慮は企業の社会的責任となり、大手企業は当然の事として環境部門・CSR部門(企業の社会的責任部門)を専門部門として経営と直結させています。中小企業も環境問題に取組む企業は多く、消費者はグリーンコンシューマーとしてグリーン購入を心がけ、それは機能性やコストのみに興味を持ち製品やサービスを選択して購入する購買プロセスから、環境配慮を組み込んだ社会や企業の購買システムに変わってきていることを感じます。
確かにどの展示会でも環境をPRした製品やサービスの出展は多くなっていますが、改めてグリーン購入の観点から出展者の環境と展示会のあり方について考えてみると、まず、「グリーン購入とは、購入の必要性を十分に考慮し、品質や価格だけでなく環境の事を考え、環境負荷ができるだけ小さい製品やサービスを、環境負荷の低減に努める事業者から優先して購入する事です」とグリーン購入ネットワーク(GPN)で定義しています。
出展者は、来場者に環境配慮型製品やサービスのグリーン購入を提案するのみでは無く、出展者自身が、印刷やブースの施工においてもグリーン購入を実施して、社会企業の立場で環境活動や情報を発信できるように努力するべきであると思います。そして、その様な努力をしている企業にビジネスチャンスが生まれる社会が育成されてきていることは事実で、来場者は環境を見る目・聞く耳・考える力・選ぶ自覚を持って展示会を見に来ています。そして、出展者の環境と展示会のあり方をISO的用語で表現するなら、出展者は環境に対する「責任と権限」を持って、その責任と権限を有意に行使して、環境社会を創る展示会へ来場者・主催者・施工者と協働していくことが重要であると考えます。
環境を配慮した展示が直ぐに出展者の利益に結びつくものではありませんが、製品やサービスをPRする展示のみでは、出展の目的を達成することは難しく、例えば、環境製品の見本市として始まったエコプロダクツ展も、現在は環境学習プログラムや環境活動を幅広い層の来場者に展開する環境コミュニケーション展示会として発展しています。環境社会を創るための製品・活動・企業を総合的に情報発信する事により出展者はビジネスチャンスをつかめる企業になれると考えます。
今後も、ステークホルダーとの協働で、環境に配慮した出展者として、重要な環境コミュニケーションの場である展示会を実施していきたいと思います。
新聞「展示会通信」へ執筆した文章をホームページ用にアレンジしました。
記:企画業務部 東使 弘三郎